メッセンジャー座談会
(Transmit ×Cyclex)
 

 フィックスギアが今のような盛り上がりを見せるずっと以前から、この自転車を仕事の道具として乗り続けてきたメッセンジャーたち。やはりどんなカルチャーでもその先駆者たちには最大級の敬意を表するべきで、まるでブームのような状況の今だからこそ、またブームだけで終わらせないためにも彼らを通してこのシーンの本当のルーツを知ることは大切なことだと思う。東京メッセンジャー界の草分け的存在ともいえる2人の現役メッセンジャーをお招きし、毎日10時間、100キロ近くを走破するという彼らの仕事、ライフスタイルや心意気、スピリットなど、存分に話を聞かせてもらった。

山田 忍
22歳から約9年間にわたりメッセンジャー暮らし。東京ではいち早くトラックバイクに乗り始め、2003年にはメッセンジャーカンパニー「Transmit」を設立。恵比寿を拠点に所属4人で少数精鋭のサービスを展開する。
  畑山良英
Cyclex所属、メッセンジャー歴10年のベテラン。過去に多くのメッセンジャー関連イベントを主催し、メッセンジャー世界大会(CMWC)の東京開催に向けて業界全体の取りまとめにも力を注ぐ。



−−今日はよろしくお願いします。まずはメッセンジャーを始めたきっかけから聞かせてもらえます?
 自分は元々コックだったんですけど、大学卒業したタイミングで仕事辞めてプラプラしてて。普通に就職とかはやっぱり興味なくて、なんか面白いことねーかなって思ってたんですよ。で、チャリは子どもの頃からBMX乗ったりしてずっと好きだったんですけど、たまたま上野の自転車屋にパーツ買いに行った時に「メッセンジャー募集!」っていう張り紙を見つけて、やることねーしなんか面白そうじゃんってなって。それでその張り紙を剥がして速攻面接行ってって感じですね

 僕もやっぱり自転車が元々好きで。レースとかじゃないんだけど子どもの頃から毎年山中湖とかまで自転車で行ってたりしてて。それまでは学歴もなきゃ家族を養わないといけないっていうような環境もあって肉体労働ばっかりやってたんですけど、高校生の時に自転車メッセンジャーっていう仕事があるって聞いてずっとやりたいなと思ってて

 でもなったはいいけど、初めは超大変だった。飯田橋から新橋まで1時間とかかかっちゃって仕事にならなかったもん(笑)。神保町から飯田橋を皇居回って帰ったりして、とにかく道が分からなかった! ずっと東京だからこの街のだいたいの地理は分かってたんだけど、やっぱりチャリに乗って知らない土地の知らない交差点にいると全然方角が分からなくて、初めはホント方位磁石買おうかと思ったくらいで

−−ダハハ。でもやっぱり自転車好きっていうのが大前提で
 俺は小学5年くらいでチャリに乗れるようになったんすけど、親父が後ろから支えてくれて自転車に初めて乗れた時の感覚ってすごく気持ちよかったでしょ? 今でもあの時の感覚は忘れられないし
 もちろん自転車好きなんですけど、あと僕の場合はアンチ便利社会じゃないけど、そういうひねくれた精神が根本にあって、山中湖まで行ったりっていうのも普通は車で行くような場所に自転車で行くことが好きだったり、この職業にしても点から点への移動だったら絶対バイクの方が早いだろって思われがちじゃないですか。そういう意味ではトラックバイクもそうかもしれないですよね。ロードバイクとか機能がすごく進化してる中で、こんな自転車に乗ってるわけで
 でも結局色んな機能があっても正直そこまで必要ないっていうかさ。俺もロード乗ってた時もあるけど、なにげにギア変えなかったりとかあったもん


−−確かに色んなモノが便利になってる世の中で、自転車だって素材や変速機の進化とかすごいのに、こんなシングルスピードで固定ギアのバイクに乗る人がいて、さらにそれが流行にまでなっちゃってるっていう現状はなんか面白いですよね。でも始めた頃はどんな自転車に乗ってたんですか?
 マウンテンっすね
 みんなだいたいそうでしたよね
 マウンテン7、ロード3みたいな。それがだんだんロードが増えてって


−−トラックバイクはどのぐらいのタイミングで東京に入ってきたんですか?
 6、7年くらい前かな。一番初めに東京にトラックバイクを持ってきたのは実は京都のメッセンジャーたちなんですよ。京都ロコとか割と大きなイベントをやってるのは知ってて、なんとなく盛り上がってるっていう噂は聞いてたんですよね。で、その中にピスト3兄弟って呼ばれてる連中がいて、彼らが初めて東京に奇妙奇天烈なチャリ乗ってやってきて。まあ色々見せつけてくるわけですよ、向こうも(笑)
 たぶん2000年のフィリー(フィラデルフィア)の世界大会(CMWC)に行った時に向こうのメッセンジャーがトラックバイクを乗ってたのを見たって話でしょ?
 そうそう、確かそんな感じ。で、その3兄弟が乗ってるチャリは見た目はロードなんだけどなんか違うから俺らもビックリして。ちょっと悔しくもあったんですけど、色々情報集めたらどうやらトラック競技用のチャリだってことが分かって。その辺はやっぱりアタラシモノ好きの男の子だし、単純に面白そうだから興味津々じゃないですか。したらたまたま知り合いが持ってるよって言うから、みんなには内緒でひそかに買ってみたんですよ
 そう、たぶん東京で一番早くトラックバイクに乗ったのが忍だよね


−−でも乗り方とか知識は?
 まったくないっすよ。今みたいにマニュアル本があるわけじゃないし、当時はそのピスト3兄弟しか僕らのソースはなくて、彼らが帰ったら東京には一切情報がない状況で。でも言ってもチャリンコだから見てくれでクランクはここに付くとかは分かるんで、プラモ感覚でなんとか組み上げて。今みたいに乗れる人が多ければいいんだけど、誰も周りに乗ってる奴もいないし、家から会社まで行くのにこりゃまずいぞって。で、何を血迷ったかフリーにしてみたんですよ、しかもノーブレーキで(笑)。今思えば余計危ないって話なんだけど、会社に1時間遅刻して行ったりして、それで初めはリアブレーキ付けてフリーで乗ってたんですよね。そのうち1人2人ってそれがネズミ講みたく広まっていってフィックスの乗り方も覚えて。トリックなんてスキッドくらいなもんで。でも最初の頃はみんなで試行錯誤しながらホント楽しかったな〜



−−当時からレースやイベントなんかもやってたんですか?
 そうですね、僕が入った頃にはもうレースとかはやってましたね。まあ仕事終わってからだからそんなに人が集まるわけじゃないけど
 キャットとかはやってたよね。まだロードバイクが主流だったけど
 うん、ここからここまで誰が速いかっていうだけの草レースって感じで
 超アンダーグラウンド。なにこれ?キャノンボールじゃん、みたいな(笑)。でも普段は他の会社の連中とそんなに付き合いもなくて、イベントでも同じ会社の奴ら同士で盛り上がってて。なんかそういう雰囲気があった。あ、でも畑山さんはすごく有名だったんですよ。あれ、これ俺言っちゃってもいいのかな?
 ・・・・・・・・
 いやすごい格好してたんですよ。黒ずくめでタンクトップに短いホットパンツみたいなの履いてて、いつもすごいイカツい顔してるんすよ。街で見るとすごい目立ってて。なんか恐い人いるなって感じで絶対カラまれたくなかった(笑)。だから畑山さんはメッセンジャーの間では初めからかなり知られた存在だったんですよ、ね?
 ね?って言われても。いつも言うよね、その話(笑)
 で、それからイベントなんかで顔合わせていくうちに恐い人じゃないってことが分かって(笑)

−−でも僕もずっと好きでロードバイクに乗ってたんですけど、当時はプロショップ行ったりサイクルスポーツとか読むと、やっぱり細いタイヤのチャリ乗る時はそういうもんなんだって思って、トガったヘルメットかぶって、下は当然スパッツで。で、今思えばフィックスなんですけど、何年か前にメッセンジャーやスケーターの人たちがスポーツバイク乗ってるのに普通にジーンズ履いて片足の裾まくって乗ってるのを見て、それってアリなんだ!なんてファッショナブル!ってヤラレたのを覚えてます

 そうそう! そうなんですよ。当時は情報ないからそういうもんだって真に受けちゃうんですよね。実際俺も初めはメッセンジャーって言ったらこれだよなってブリコのサングラスかけてたし(笑)
 ほら、結局みんなそうじゃん(笑)





−−ダハハ。それでは話を少し戻しさせてもらって。どうしてメッセンジャーの間でトラックバイクが広まったんでしょうか?
 う〜ん、なんで広まったかっていうのは全員集めて聞いてみないと分からないけど、単純に乗ってて面白いっていうのと、メンテが楽っていうことじゃないかな。あとはさっき畑山さんも言ってたけど、結局ロードバイクに乗っててもそこまでの機能はいらないってこともあるし。それと個人的な意見だけど、俺はこれが一番安全な自転車だとも思ってますよ。すべて自分の力でコントロールするわけだからむやみに飛ばしたりもしないし、頼るものがない分、常に危険予測とその判断には他の自転車以上に集中して乗るから

−−だいたい1日どれくらい乗るんですか?
 1日10時間、100キロくらいは走るんじゃないかな
 そうですね。80〜100キロくらいかな。

−−それだけ走ってると体力的な面もそうですけど、気疲れもすごそうですが
 いや逆に1日10時間乗ってると慣れるんですよ。普通の人はたぶん1日に何時間しか乗らないと思うけど、俺らは1日中乗ってるから。だから危ないところ、危なくないところが自然と読めてくるようになるし、そうなると1日のうちで危険な状況っていうのはそんなにないんですよ
 まあ常にモリモリ踏んでるわけでもないしね。無駄な力を使わずに効率良くっていうのが僕らの走り方だから


−−例えばどういうことに一番気をつかって乗ってるんですか?
 俺は被害者になっても加害者にならないこと、それが一番。ぶつけられてもいいけど、ぶつからないこと。他から見て危ない乗り物に乗ってるわけだから突然出てくる車や人、色んな危険を想定しながら乗ってますよ。僕らはトリックとかは出来ないけど、どっちが良い悪いじゃなくて公園でトリックやるのと公道を走るっていうのはまったく違うことで、むしろ公道を走るっていうことがひとつのトリックだと考えてもらった方がいいかもしれない

−−今のような状況だとメッセンジャーの方たちの走り方に影響を受けて公道を走る人も多いように思います
 やっぱり後ろから見ててこいつ危ないなと思うこともありますよ。でもどうなんだろう。まあでもメッセンジャーだって事故る奴もいるし、フィックスじゃなくてもどんなチャリでも事故る可能性はあるから。車だって乗り物はなんだってそうでしょ。それにイケイケな奴もいればイケイケじゃない奴もいるし、結局は人間性の問題だとは思うし
 う〜ん、究極言えば僕は他の人のことよりも自分と自分の家族をこの仕事で食わせていくことが第一で。やっぱりこっちは遊びでやってるわけじゃないから
 それは俺もそうかな。別に俺たちの走り方を真似しろとも思わないけど、ましてやそんな走り方をしてる俺がそういう子たちを教育しようとも思わない。お前らは自転車のプロなんだからって言われるかもしれないけど、俺たちはデリバリーのプロであってマナーのプロじゃないから。これで金稼がなきゃいけないし、だからホントに申し訳ないけどこういう風に走っちゃってる。ホントに遊びで走ってるわけじゃないんですよ。ただ、俺たちは毎日10時間走り続けた結果こういう走り方をしてるわけで、フィックスに乗り始めて何日か、何カ月かでそんな走り方をしたらもちろん危ないと思いますよ。まあでもそういう走りを見てカッコイイと思っちゃう気持ちも分かるっちゃ分かるんだけど


−−なるほど。ここ最近で驚くほどフィックスに乗る人たちが増えて、メッセンジャー自体が注目されるような存在にもなったりしてて、ある意味ブームのような状況にあると思うんですけど、その辺はどう思われてます?

 昔のスケートボードのような盛り上がりを感じるっていうような話はよく聞きますよね。ただ、まず僕らは遊びよりも仕事として自転車に乗ってる部分が大きいんですよね。僕は妻も子どももいて、この仕事で食わしてるっていうプライドもあってそっちが先なんですよね。でももちろん乗ってて楽しいって部分は分かりますよ
 ブームが良いのか悪いのかは別として、例えば信号待ちしてるじゃないですか。その時にフィックス乗りが一緒になることも多くて、「こんにちわ」って挨拶するでしょ。そうすると向こうも「どうも」って言ってくれるんだけど、こっちの目を見ないでチャリばっかり見てるんですよ。興味があるのはチャリだけなの?って。大切なのはチャリに乗ってる人間が楽しいかどうかでしょって。ブームだろうとなんだろうと、俺はフィックスだけじゃなくてチャリに乗ってみんなで楽しめればそれで良いと思ってて、今のノリはどこのパーツだとかファッションばっかりに目が行っちゃってるような気がして。俺らはチャリを仕事の道具としか思ってない部分もあるからかもしれないけど、チャリだけに興味が行っちゃったらブームで終わっちゃうと思うんですよね。別に偉そうなことを言うつもりは全然ないんですけど、それでも俺らはずっと乗り続けるし、流行だけで終わっちゃったらやっぱりイヤだなって
 色んな取材を受けたりもしたんですけど、なんか途中でお腹いっぱいになっちゃうんですよね。始める人にとってはもちろん有益な情報なんだけど、与えられたものだけをやってるんだったらその先がない気がするんですよ。重要なのはトラックバイクかどうかってことじゃなくて自転車に乗ってる人間がどう感じてるかですからね
 そうだよね。俺らだって初めはマウンテンバイクに乗ってて、いまフィックスに乗ってるのはただ単に自分が乗りやすいチャリを選んでるってだけですから。みんな初めてチャリンコに乗れた少年の頃の感覚を思い出そうよ!って。もちろん楽しいこと以外に公道を走るわけだから危険なこともあるってこともしっかり認識しないといけないけど

 ホントそう。もしこれが一過性のブームだけなら早く終わった方が安全なのかもしれないし。
 パーツも高くなったしね(笑)
 でもね、やっぱりT-19のアキラ君たちとかは純粋に熱いですよね。僕はメッセンジャーのレースっていうのは体力勝負であり根性試しの場だと思ってて、メッセンジャーですらビビって出なかったりする中で、メッセンジャーでもない彼らが僕らのレースに参加してくれて、すごく熱かった。それで彼らを中心にどんどん盛り上がっていって、気づいたらただの荷物運びの僕らも注目されたりして正直ビックリしてる部分もあるんだけど(笑)。でもこういう盛り上がりを否定するつもりはまったくなくて、だってこれは日本だけじゃなくて世界的なことだと思うし





−−僕らもそういう状況の中でこんなウェブサイトを運営してて、逆にそんな今だからこそシーンの先駆者であるメッセンジャーの方たちの言葉を伝える意味もあるんじゃないかなって思ってて。さきほど1日100キロ近く走るって仰っていたと思うんですが、もう少し具体的にメッセンジャーの仕事について聞かせてもらってもいいですか?
 一言で言うと命を懸けた荷物運び(笑)。でも冗談じゃなくて命張ってるし、やっぱり荷物あってのメッセンジャーですから。だから女は濡らしても荷物は濡らさない、みたいな。あ、俺いま良いこと言ったな(笑)

−−女は濡らしても荷物は濡らさない。パンチライン出ましたね(笑)
 でもホントそうですよ。荷物が出なきゃ俺たちはメシ食えないし、荷物に食わせてもらってるわけだから。一度車に突っ込まれたことがあったんですけど、鼻血出しながら荷物だけは運びましたもん。それが心意気じゃないけど、メッセンジャーのプライドみたいなもんで

−−荷物がメシの種ってことですよね。でも単純にやっぱり1日100キロって僕らじゃ考えられないです・・・・
 でもやっぱり毎日10時間も乗ってるわけだから仕事が終わったらあまり自転車には乗りたくないかって思うことも多いですよ。その分、週末は解放されるんでレースやったりイベントやったり、仕事抜きで自転車で遊んでますよ

−−なるほど。仕事の時はだいたい都内のどの辺まで走るんですか?
 それは会社がどういうクライアントを持ってるかによるんですよね。うちらはデザイン系の事務所やメディア、アパレル、広告代理店とかが多いんでだいたい恵比寿、青山近辺かな。まあ4人だけで小さくやってるんで基本的に行けないところは行けないって言うし、割と自由なスタンスでやってますね。でもCyclexはもっとしっかりやってるから違うでしょ?
 そうですね。うちは金融や不動産がメインなんで大手町とか日本橋とかのビジネス地区が多いです。やっぱり青山近辺のデザイン系をやってると、仕事も不規則だし荷物も定期的に出てくるわけじゃない。そうなると金融とか不動産とか9〜5時でやってる会社を相手にした方が効率が良くなってくるんです。
 そう。でもうちみたいにたった4人の小さい規模でこんな見た目だと大手町とかに行っても相手にされないんですよ。今は個人事業主でやってて、借金背負ってちゃんと会社形態にしてやれば違うんだろうけど、なかなかね。でもだからと言って仕事が不真面目なわけじゃないし、きっちり仕事はこなす自信もあるし。でも日本だとたった4人しかいないとか、会社じゃないってことだけで信用されないんですよね。外国はタトゥー入ってモヒカンの奴とかでも仕事ができるんだったら受け入れてくれる土壌があるでしょ。俺個人はそれが正当なディールだと思うけど、日本にはそういう土壌は残念ながらないから。でもこの国で仕事してる以上はしょうがないことなんですけど、正直言えば俺たちこんなだけど仕事は真面目にやってるじゃんって部分はある。ちゃんとやってんのにっていうジレンマですよね。やべ、なんか愚痴大会みたいになってきた(笑)

 確かに日本は見た目で判断されるから。職業差別じゃないけど、ビルに入れてくれなかったりとか、警備員に止められたりとかいうのはしょっちゅうありますよね
 それでも俺の場合は元々いた会社がすごい楽しくて、それでその時の仲間と一緒にこれだったら自分たちでもできるんじゃないってTransmitを作って。基本的には金儲けよりも自分たちがいま楽しいと思えることをやれればいいって思ってて、こういう規模でこういうスタンスでやってるから。色々世知辛い部分もあるけどこれはこれで良いんですよね




−−諸外国と比べて日本の社会は確かにそういう世知辛い部分が大きいと感じますよね・・・・。では、少し明るい話題に戻しましょう。ずばりメッセンジャーの面白さ、魅力とは?
 いや、でも面白いクライアントさんとかもいるんですよ。AVの制作会社さんとかもたまに使ってくれるんですけど、やっぱり男の子だから妙にワクワクしちゃって、それ俺にもコピーして!って思わず言いそうになっちゃったりね(笑)。そういうのも魅力? でもなんでなんだろう。俺は基本的に1人が好きで1人で仕事ができるっていうのが良いのかな? なれば絶対分かると思うんですよね。季節感じて走ればきっと

−−でも世の中、好きなことを仕事にするってことは以外と簡単なんじゃないかなって思うんです。もちろん大変なんだけど好きなことであればやれるし、それをそのまま仕事にしちゃえばいい。でもメッセンジャーは宅配することが仕事で、皆さん別に荷物マニアとか宅配マニアじゃないと思うんです。好きなことを仕事にするというよりは、仕事はいかに楽しむかという部分がすごくメッセンジャーを特徴的な職業にしてる、とは思いませんか?
 言われてみれば確かに僕は宅配マニアでも荷物マニアでもないな(笑)
 大手に行けばこの仕事を単なる仕事としか考えていない人たちもたくさんいるしね
 夏に来て冬にやめるような季節労働者みたいな人たちでしょ。そうだよね、そういう意味では俺らは仕事の中で楽しみを見つけてるのかな。信号と交通を完璧なタイミングで切り抜けて綺麗なラインが取れた時とか、予想していたより早く届けられたらやっぱり嬉しいし


−−そういうことですよね。他にも楽しめる要素ってたくさんあるんじゃないですか? 例えば経験していくにつれて上達することも絶対ありますよね? トリックとかのスキルとはまた違うスキルっていう部分で
 絶対ある。例えばライン取りにしてもルーキーはガツン、ガツンっていう雑なラインになりがちなんだけど、トラフィックが読めてくればすごくスムースに乗れるようになる。あとはルートの取り方も人それぞれ、経験によって違ってくるんですよ。ある地点までデリバリーするっていう時にひとつのルートしか思い浮かばない、もしくはルートを決めて行くっていうのは素人なんですよね。でも経験していくとデリバリーを始める時にいくつかルートが頭に浮かんで、その時々の交通状況なりを考慮して最適なルートを自分で判断してチョイスする。その中には当然個人的に好きなルートもあって、例えば桜の季節とかはこっちから行こうとかってなるわけですよ。でも帰りは絶対に桜のルートは取らない、なぜかっていうと呑みたくなっちゃうから(笑)

−−仕事してる時に桜見て呑んでる人見たら確かに呑みたくなるし、むしろムカツキますね(笑)
 そうでしょ。あとはカワイイ女の子に見とれちゃうアブないルートとか。特に雨の日とかは透けちゃってもっとアブねーみたいな。で、そういう危ないルート情報はみんなで無線で共有したりして。いやホント、どこで工事やってるとかそういうのも含めての話ですよ(笑)
 あるよね、そういうの。あとはディスパッチャーによっても全然気分の乗り方も違うし
 荷物を振り分けるディスパッチャーっていう人間が必ず会社にいて、うちはローテーションでやってるんですけど、やっぱり血の通った人間が動くわけだからこっちの気分を読んでくれたりすると乗れるわけですよ。そのスキルっていうのはある種のセンスで、まあDJみたいなもんでよね。だから「今日のDJだれ?」って聞く時もあるぐらいだから

−−メッセンジャーは基本的には個人プレーっていうイメージがあるんですけど、ディスパッチャーも含めてチームで動く部分も大きいと。そういう要素がメッセンジャー同士の連帯意識につながってたりもするんでしょうか?
 そう思いますよ。やっぱり命かけてる要素って絶対あって、それをみんな分かってるからお互いサポートし合うし。それは外国に行ってもそうなんですよね。NACCCとか外国の大きな大会とかに行っても東京のメッセンジャーっていうだけで誰かが泊まる場所を確保してくれるんですよ。メッセンジャーは金がないのはどこの国も一緒で、だからみんなすごく助けてくれる。それって銀行マンとかには絶対ないでしょ(笑)。そういうスピリットはメッセンジャーだけのものだと思うし、そういう横のつながりはホントに強い。この仕事を始めて英語も少し話せるようになってよっぽどグローバルな仕事だなって。だから奴らが東京に来れば俺らも世話するし、でも前にフィリーから来たメッセンジャーはヤバかったな〜。家に泊めたんだけど、いきなりマンションの敷地内にテントとか張り始めちゃって「何やってんの!?ダメだよ!」って言ったら、普通の顔して「なんで?いいじゃん」って。ホントこの世界は狂ってる奴が多いんですよね(笑)




 あと外国の奴らは東京に来ると「とにかく街がデカイ」って言って帰ってくよね
 そう、「HUGE! HUGE!」ってね。東京は間違いなく世界で一番デカイ街ですよ。ニューヨークだって30分あれば上から下まで行けちゃうけど、東京は絶対30分じゃ回れないもん。デカサだけはハンパないっすよ
 どこまで行っても高層ビルがあるし、それに道路もキレイだしね
 ずーっと街が広がってる感じで、しかも街が碁盤の目になってないから迷うんですよ。だから目的地に行くのに色んなルートがあって走ってて逆に面白い

−−そんな巨大な街、東京で是非ともCMWCをやってほしいものです
 それは僕らの夢ですよね。以前やってたMIXPRESSIONもそれに向けた予行演習的な要素もあって。でもそのためにはクリアしないといけないハードルは多いですよ。基本的に世界戦はどこの都市でも道路を封鎖してやるんですけど、そのためには当然行政の許可がいるし、しっかりスポンサーも付けてやらないといけない。だから今までアングラでやってきたことを表に出してやっていかなきゃいけなくて、今のトラックバイクをめぐる状況が吉と出るか凶と出るかは分からないけど、ブレーキの問題も含めこのカルチャーが抱えてる問題点ともしっかり向き合ってやっていかないと。たぶん東京でやったら世界中から400〜500人くらいのメッセンジャーが来るだろうし、ギャラリーも入れたら1000人を超えるイベントになりますからね
 単純にそれだけのメッセンジャーが東京に来るってことを想像しただけでヤバイよね。それこそ世界にはCMWCに行くためだけに金稼いでる世界戦マニアみたいな奴らもいるくらいだし
 ホントに大きな夢だし、海外でも「次は東京で」っていう声がすごく多くて、それに応えるっていう意味でも近い将来に是が非でも東京でやりたい、っていうかやります!
 それはホントに是非!

−−東京にはそれこそシノ君を含め世界とガチンコで勝負できるメッセンジャーもいるわけだし、僕たちもCMWC TOKYOが実現することを心から願ってます。それでは今回はこの辺で締めさせてもらいます。今日は長い間本当にありがとうございました!




※デリバリーのご用命は以下の番号をダイヤル!
Transmit 03-3446-3127 >> http://www.trans310.com/
Cyclex 03-5572-1123 >> http://www.cyclex.jp/
 




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